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2020年07月のバックナンバー記事

仏師定朝と阿弥陀如来坐像
皆さん、こんにちは! 夏本番がやって参りましたが、梅雨の頃からうわさによると、
コロナウィルスは紫外線に弱いなどと聞いていましたが、最近の状況を見ると、
なかなか甘くないようです。
日々、とにかく気を緩めず、自分で出来ることをして過ごしましょう。

さて、このコロナ禍で、一日も早い終息を願う日々ですが、
ふと、阿弥陀様に合掌したい気持ちになります。

私が何度も会いたくなる阿弥陀様は、京都宇治の平等院のご本尊である
木造阿弥陀如来坐像です。
初めて目にしたのは京都のガイド研修の時、当時はまったく無知な状況ですので、
難しいことはわかりませんでしたが、平等院が10円玉に描かれている、
ということと、唯一、格子の円窓から阿弥陀様のお顔が
拝せることに驚いたのを覚えています。

ご存じのように平等院は、藤原氏の全盛期を築いた藤原頼通が、極楽浄土の世界を
表現するため、1053年、阿弥陀如来を配した阿弥陀堂を創建しました。
阿弥陀堂の建物は、両翼を広げた鳳凰の姿に
当時は鳳凰堂という名前はなく、そのように呼ばれるようになったのは、
江戸時代くらいからだと言われています。
いずれにしても、当時よりも規模は小さいとはいえ、
藤原頼通が頭に描いた極楽浄土の豪華絢爛な姿を今に見る事ができます。

平等院では、2012年9月から2014年9月まで2年間、平成の修理を
行っているのですが、それまでの調査結果に基づいて、
出来る限り、創建当時のものに近い状態に再現されています。
鳳凰堂の屋根にある「鳳凰」や「梵鐘」は現在のものは2代目で、
初代のものは境内の宝物館で見ることができます。
梵鐘には、美しい鳳凰や天女などが描かれていることで知られますが、
神護寺、三井寺とともに、日本三名鐘のひとつなので、興味深いですね。

また、鳳凰堂の前に阿字池という大きな池がありますが、
以前、発掘調査が行われて、その際に判明したこととして、
建物の両翼はもっと池の中に向かってせり出していて、
さながら池に浮かぶ極楽浄土、のような雰囲気だったのではないかとのことです。
何となく、私は厳島神社を思い出してしまいます。

ところで皆さんは、仏師定朝をご存じでしょうか?
時々、ガイド教本に出てきますね。定朝、じょうちょうと読みます。
定朝は、それまで行われていた仏像を1本から彫る「一木造り」から
「寄木造り」を大成させた人として有名です。
寄木、つまり木をいくつかのパーツに分けて、パーツごとに分業して
製作する方法です。
平等院の阿弥陀如来坐像は、仏師定朝が寄木造りで作ったものとして
確実なもので、寄木造りとしては日本最古のクラスです。
なお、日本のあちこちに、仏師定朝が作ったとされる仏像はあるものの、
いずれも確定的でなく、定朝様と表現して呼ばれています。
※定朝様はじょうちょうさま、ではなくじょうちょうようと読みます。

京都で、定朝様の仏像で知られているのはいくつかありますが、
浄瑠璃寺に九体揃った阿弥陀如来様が安置されていて、本当に圧巻です。
1体を除いて藤原期の作、もちろん国宝です。

平等院の阿弥陀如来坐像の高さは約2.8メートル、
台座が約1.8メートルありますので、かなり大きな仏像ですね。
正面に格子があり、その中心の丸い窓から阿弥陀様のお顔を
拝することができますが、正面まで行かずとも、
池を隔てた手前からも見えます。
おそらく当時、一般の人は池の手前からしか拝むことが
出来なかったのではないかと個人的に思っています。

ちなみに日本で最も古い阿弥陀如来像は長野県の善光寺のご本尊ですが、
何と654年以来、絶対秘仏となっていて、見ることができません。
ご住職ですら、目にすることができないそうです。
※御開帳の時に公開されて拝することが出来るのは前立本尊です。
善光寺の御本尊は「一光三尊阿弥陀如来像」といって、
阿弥陀如来の右側に観音菩薩、左側に勢至菩薩がお立ちになる様式で、
善光寺式如来とも呼ばれます。

また、平等院の阿弥陀如来様よりも古いものとして、
仁和寺の阿弥陀如来三尊像(国宝)があります。
ヒノキの一木造りで、製作は888年とされています。

このように、阿弥陀如来様のポイントだけでも、
「長野県のほら!あのお寺!」と言いながら、質問形式などで
工夫してご案内して差し上げると、
お客様も興味深く聞いて下さると思います。

あ、そうそう定朝について、少し触れてみたい場合は、
小説から入ることもおススメです。
「満つる月の如し 仏師・定朝」という澤田瞳子さんの著書は、
堅苦しくなく、本当に面白い本でした。


(2020.07.31)

 
 
   
 
 
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