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伝統建築工匠の技〜世界無形文化遺産
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最近めっきり寒さが身にしみるようになりましたね。 今年は例年よりも寒い気がしますが、 皆さん、体調に気を付けてお過ごし下さいね。
コロナ禍の影響で、観光業は今、大変な時期なのですが、 そういえば冬になると、増えてくる仕事先が 意外と寒い場所だったような・・そんな気がしませんか?
特に北陸、金沢や能登半島、北陸の冬は私たち観光者から見ると、 とても美しく感じることも多いですが、 それでも輪島の朝市などに訪ねると、あ〜瀬戸内の寒さとは まったく次元が違う寒さだな・・と。
厳しい冬を越すため、いろいろ工夫された知恵を見るにつけ、 地元の方にとって、冬を越すことは本当に大変なんだな、・・と 感じることもできます。
さて、今回はそんな冬にちなんで、世界遺産にも指定されている 「合掌造り」についてお話させていただくことにしました。
--------------------------------- 白川郷の合掌造りは世界遺産に指定されていますが、 昨年の12月17日には、伝統建築工匠の技ということで、 茅葺と茅採取、この2つの伝統技術が認められて、 世界無形文化遺産に登録されたそうです。 古くから人々によって伝えられてきた技術がこうして 認められることは本当に喜ばしいですね。 ---------------------------------
「合掌造り」とは、角度の急な切妻屋根になっていて、 屋根の形が合掌した時の手の形に似ているところからその名がついたそうです。 その屋根の勾配は60度近くもあり、釘やカスガイを一本も打たず、 丸太を荒縄とネソで結んであります。 「ネソ」とは、学名をマンサクとも呼ばれる、柔軟性に富んだ木が使われます。 棟を形成する茅を縛るためにも用いられます。
二階、三階部分に窓のようなものがあるのですが、雪がかなり積もった時は、 この窓が出入口になります。 また、合掌造りの建物で最大の特色は、建物全体に囲炉裏の煙や熱が 行き渡るように工夫されていることです。 そして、熱と煙は上階へとゆっくり昇っていきます。 煙は最終的に屋根の最上層にある、煙出しから排出されますが、 万一の火災に備えて、2階には、「火見窓」という、火を監視する窓もあります。 こうした囲炉裏の煙で、萱が何と約30年以上も持つそうですが、 もし、囲炉裏に火を入れなくなると約20年ほどしか持たないそうです。
江戸時代の中頃、養蚕業が活発化してくると、屋根の上層を利用して、 養蚕の棚を設置するようになりましたが、養蚕棚を設置する場所をたくさん 確保するために、3層・4層という具合に屋根がさらに高く切り立ったと 考えられています。
茅葺屋根の葺き替えは、30年から40年に一度行われるますが、冬になると、 雪と一緒に茅が落ちてしまうことがあるので、その補修作業は年に1・2度行われます。 しかし、この補修作業は大変なので、 地域住民の共同作業で行われます。この仕組みは結(ゆい)と呼ばれています。 しかし、この作業には大変な費用がかかり、例えば茅葺き屋根の片側で 約1000万円の費用がかかるとか。 葺き替えに使用する茅の量は、茅の厚さとか、屋根の大きさによって異なりますが 約1万束が必要だといわれます。ちなみに、この量は4トン積みのトラック 約20台分に相当するそうです。 その費用は、1970年国の史跡に指定されて以来、国の補助でまかなわれています。
ところで、このように素晴らしい合掌造りの建物ですが、 ひとつ、弱い部分があります。それは「火事」です。
特に白川郷では、火災に備えて、55台の消火栓付き放水銃などの消火器具を 完備していて、毎年何回もの消防訓練が行われています。 それでも万一、火災が発生したときには、この消火栓が一斉に開かれて、 合掌集落全体が水に包み込まれるしくみになっています。
私たちは夏、楽しみにする風物詩といえば「花火」ですが、 例え線香花火であっても禁止されていて、 観光客はもちろん、地元の子供たちでも、花火は禁止なのだそうです。
1日も早く、コロナが収束し、またこのように美しい 合掌造りを実際に見ることが出来る日が楽しみです。
(2020.12.30) |
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