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| 琵琶湖の固有種が語る、淡水の王国の歴史
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皆さん、こんにちは! まだまだ暑い日が続いております。 秋というには早すぎて、最近では夏が長すぎますので、いつ秋が来るのか、少し心配になってしまいますね。
それでは今回も、少しでも涼しさが感じられるように「水辺」をテーマにしたいと思います。
日本最大の湖である琵琶湖。 滋賀県の中央に静かに広がるこの湖は、ただ大きいというだけでなく、 「世界的にも稀な超古代湖」として知られているところです。 推定で約400万年にわたって干上がることなく存在し続けている湖といいますのは、 世界でもバイカル湖やタンガニーカ湖などごくわずかしかありません。
琵琶湖はその中でも、特に多くの固有種を抱えていますので、“淡水のガラパゴス”とも呼ばれています。 なぜ、琵琶湖だけにしかいない生き物が多いのでしょうか? その理由は、湖が長い年月をかけて地形を保っていること、 また、生物が閉ざされた環境の中で独自に進化してきたから、と言われています。
その種類や数というのは、世界でも類を見ないそうですが、多くの河川も琵琶湖に流れ込んでいますし、 そういった複雑な環境が、特別な条件を作り出したのでしょうね。 そうして琵琶湖は、今では 50種類以上の固有種を育む、学術的に珍しい生物たちの宝庫となったようです。
さて、その代表格が 琵琶湖の宝石とも呼ばれるビワマスです。 ビワマスはサケ科の魚で、銀色に輝く体と、柔らかい淡いピンク色の身が特徴です。 しかも、大きいものでは40〜60センチに達するようです。 琵琶湖に生息するサケ科の魚はこのビワマスだけで、川で生まれ、琵琶湖の深い場所で育ち、 産卵のため再び川へ戻るとのこと、海に出ない “ 淡水のサケ ” なのですね。
ビワマスは、古来より地元では「幻の魚」とも呼ばれて、京都の御所にも献上されていたそうですが、 現在では、日本の天然魚の中でも希少性が高く、保護活動が続けられています。
続いて紹介させていただくのが、琵琶湖固有のユニークな淡水魚、ニゴロブナです。 この魚は、滋賀県の伝統食「鮒寿司」に欠かせない存在として全国的にも知られていますね。 ニゴロブナは、体長20〜30センチほどで、湖岸に生息しているらしく、 春になると群れをなして産卵に向かいます。 鮒寿司の原料として利用されてきた歴史は古く、平安時代の文献にも記載が見られるほどです。
以前、明治2年創業の阪本屋さんの鮒ずしを、実は頂いたことがあるのですが、 本当に、本当に絶品でした。 今年は久しぶりに、お正月にぜひ、と思っているところです。
さらに琵琶湖には、他では滅多に見られない “ トゲウオ科 ” の仲間 ハリヨ がいます。 ハリヨは体長5センチほどの小さな魚で、産卵期になると、なんとオスが巣を作るそうです。 水がキレイな場所でしか生きられず、今は保護対象になっています。
ところで、魚だけでなく、琵琶湖の固有の貝もまた、長い歴史を生き抜いてきています。 代表的なのが イサザ(ワカサギに似た小型魚)とともに語られる有名な固有種セタシジミでしょうか。 セタシジミはかつて「日本一」と称されたほど風味が豊かで、瀬田川周辺でたくさん獲れたそうです。 黒々とした殻で、身も大きくて、出汁の旨味がとても強いとか。
そして貝類の中でも特に興味深いのが、ビワヒメタニシ。 ビワヒメという名前がなんとも可愛いですよね。 でも、非常に学術的にも価値が高いそうです。
こうして考えますと、琵琶湖はただの湖ではない、と改めて感じますね。 約400万年の間、淡水域として生き物を育み続けてきた琵琶湖を訪れると、湖面の静けさや水鳥の 鳴き声の美しさもさることながら、長い進化の過程や、人と自然の共存も考えさせられます。
もしバスの車窓から琵琶湖が見えたなら、「この湖には、ここにしか生きられない生き物が 数十種類もいるんですよ」と一言添えるだけで、 グッと味わい深い旅へと変わるのではないかと思いました。
美しい琵琶湖と鮒寿司 ↓↓

(2025.09.26) |
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