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| 瀬戸内の穏やかな海に浮かぶ、夏の大鳥居
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皆さん、こんにちは!梅雨が明け、いよいよ夏本番ですね。 じりじりと照りつける太陽の下、バスの車内のありがたさが身に沁みる季節です。 この時期のツアーは熱中症対策が何より大切で、こまめな水分補給と日陰のご案内に、 ガイドとしていつも気を配っていました。
お客様が暑さを忘れて目を輝かせてくださる瞬間を作ることが、 夏のツアーガイドとしての腕の見せどころでもあります。 が、最近では夏の観光バスツアーは非常に少なくもなって残念です。
さて、7月といえば広島・宮島が最も輝く季節のひとつです。 瀬戸内の穏やかな海に浮かぶ朱色の大鳥居は、夏の青空と海の青さを背景に、 見る者を思わず立ち止まらせる美しさがあります。 今回は、その厳島神社と、この島に深く関わった平清盛について、 ちょっとマニアックな話も交えながらお話しします。
厳島神社の創建は推古天皇元年、593年とされています。 佐伯鞍職(さえきくらもと)という人物が、島の神・市杵島姫命 (いちきしまひめのみこと)のお告げを受けて社を建てたのが始まりとされています。 ここで少し面白いのは、「宮島」という島の名前についてです。 正式な島の名前は「厳島(いつくしま)」ですが、神社があることから 「宮島」と呼ばれるようになりました。
そして現在、島の住所は「廿日市市宮島町」となっており、 日本で唯一「神社の名前が住所になっている島」ともいわれています。 また、宮島には島内に信号機が一基もありません。 交通量が少ないためですが、バスで訪れる際にはこういった「島の豆知識」を ひとつお伝えするだけで、 お客様の興味がぐっと高まります。
さて、厳島神社を現在のような壮麗な海上社殿へと造営したのが平清盛です。 1168年頃、太政大臣という最高位に上り詰めた清盛は、平家の守護神として 厳島神社を大規模に整備しました。
清盛が厳島神社を信仰するようになったのは、平家の先祖が安芸国の国司を務めていた 縁によるものとされていますが、実はそれ以前から厳島の神は「海の神」として 瀬戸内海の航路を行き来する人々に広く崇められていました。 清盛が日宋貿易を推進するにあたって、瀬戸内海の海上交通の守護神としてこの神社を 位置づけたという側面もあったようです。
清盛が構想した「海の上に浮かぶ社殿」というビジョンは、当時の人々にとって とても驚異的なものでした。 満潮時には社殿全体が海に浮かぶように見えるこの設計は、 「神の世界が現世に現れた」ように映ったことでしょう。
ここで少し技術的な話をすると、海上に建てられているにもかかわらず社殿が腐らないのは、 床板をあえてすき間をあけて張ることで、高潮時に水圧が床下から逃げるようにしているためです。 また、鳥居の柱は岩盤に固定されているわけではなく、自重だけで立っています。
クスノキの自然な太さを活かした柱は、一本で約60トンもの重さがあるとされており、 その重さで砂地に沈み込んで立っているのです。 「あの鳥居、コンクリートで固めてあるわけじゃないんですよ」とお客様にお話しすると、 「えっ、本当に?」と必ず驚いていただけます。
↓夏の厳島神社・大鳥居

清盛の信仰の深さは「平家納経」にも表れています。 平家一門が一巻ずつ丁寧に写経した法華経を、金銀の砂子や精緻な絵で飾りつけた豪華な巻物として 奉納したもので、現在も国宝として厳島神社の宝物館に所蔵されています。 実はこの平家納経、清盛自身が書いたとされる巻には、 経文の途中に「のどが渇いた」というような走り書きのような文字が混じっているともいわれています。 権力の頂点に立った人物が、神への祈りを込めて写経をしながらそっとこぼした本音—— そんなエピソードを知ると、清盛がにわかに身近に感じられてきます。
宮島に行かれるお客様へご案内する際に、私がいつも心がけていたのこと、 それは「潮の満ち引きの時刻をお伝えすること」でした。 満潮時と干潮時とでは厳島神社の表情がまるで違い、満潮時には大鳥居が海に浮かぶように見え、 干潮時には鳥居のそばまで歩いて行くことができます。
潮位の情報は事前に調べておけばすぐわかりますし、宮島に宿泊となっているコースの場合は、 「今日は何時頃が満潮ですよ、ぜひその時間に海側から鳥居をご覧になってください」と 一言添えるだけで、お客様の動き方がまったく変わります。 こういった「時間と場所のご案内」というのも、バスガイドの大切なご案内のひとつです。
お盆の時期には、宮島で「とうろう流し・花火大会」が行われます。 海に漂う無数の灯籠と夜空の花火が重なる光景は、言葉では言い表せない美しさがあります。 先祖の霊を送るお盆の灯籠流しが、海上の神社という舞台で繰り広げられるのは、 宮島だからこそ成立する、唯一無二の夏の風景です。
夏の宮島はとにかく暑いですが、その暑さも含めて夏の宮島は格別です。 皆さんもぜひ、お仕事以外の時に、満潮と干潮の両方の顔を楽しんでみてください。
↓蘭陵王

(2026.07.27) |
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