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2026年08月のバックナンバー記事

奈良・大和路の古寺巡礼が人気です
皆さん、こんにちは!
8月も終わりに近づき、朝晩の風にほんのりと秋の気配が混じるようになってきました。
日中はまだ残暑が厳しいですが、夕暮れが少し早くなり、虫の声が聞こえてくると
「ああ、季節が動いているんだな」としみじみ感じます。
この季節の変わり目が、個人的にはとても好きです。

さて、これから秋にかけてバスツアーで人気を集めるのが、奈良・大和路の古寺巡礼です。
紅葉にはまだ少し早いこの時期から、酷暑が和らぐと同時に古寺を訪ねる旅が、
ぐっと気持ちよくなります。
今回は、大和路の古寺が持つ歴史の深みの中から、
ガイドのご案内にきっと役立つ「知られざる話」をいくつかお届けしたいと思います。

「大和路」とは、奈良盆地一帯、かつての大和国(現在の奈良県)を指す言葉です。
飛鳥・奈良時代に日本の政治・文化の中心として栄えたこの地には、
1400年以上の歴史を持つ寺院が今も数多く残っており、
歩けば歩くほど日本の歴史の根っこに触れるような感覚があります。

大和路の古寺の中でまず外せないのが法隆寺です。
聖徳太子によって607年頃に建立されたとされ、
現存する世界最古の木造建築群として1993年に世界文化遺産に登録されました。

法隆寺でぜひお客様にお話ししていただきたいのが「エンタシス」についてです。
金堂や中門の柱をよく見ると、柱の中央部分がわずかに膨らんでいることに気づきます。
これは古代ギリシャのパルテノン神殿でも使われた建築技法で、
視覚的に柱が細くくびれて見えるのを補正するための工夫です。

はるか西方の技術が、シルクロードを経て飛鳥時代の日本にまで伝わっていたということで、
お客様がたいへん驚かれる話のひとつです。
「奈良の古いお寺とギリシャのパルテノン神殿が同じ技術を使っているなんて」と、
世界の広さと古代のつながりをしみじみ感じていただけます。

もうひとつ、法隆寺の「知る人ぞ知る話」として、
五重塔の心柱(しんばしら)についてお話しします。
法隆寺の五重塔は、中心に一本の長い柱(心柱)が地面から上に向かって通っていますが、
実はこの心柱は地面に固定されておらず、空中に「浮いている」状態になっています。

つまり心柱は塔の構造を支えているのではなく、各層の屋根が独立して動けるようにするための
「軸」の役割を果たしており、地震の際に各層がばらばらに揺れることで、塔全体の倒壊を防ぐ
免震構造になっているのです。

1400年前の建築にこれほど高度な技術が込められていたとは、本当に驚かされます。
現代の超高層ビルに使われる制振技術と発想が似ているとも言われており、
技術系のお客様にお話すると特に喜んでいただけるエピソードです。

また、法隆寺の中門ですが、下の写真はお寺の中から見ています。
よく見ると、エンタシスの太い柱が5本ありますね。
東大寺など、だいたい偶数になっているところ、このように奇数になっているのは
法隆寺の特徴ですが、確実な理由はわかっていません。
もし、奈良時代にタイムスリップできるなら、ぜひ聞いてみたいところです。


↓法隆寺の中門


大和路のもうひとつの名刹、長谷寺(はせでら)も外せません。
西国三十三所観音霊場の第八番札所として知られるこの寺は「花の御寺(はなのみてら)」
として名高く、四季を通じて花が絶えません。
本尊の十一面観世音菩薩立像は高さ約10メートルと日本最大級の大きさで、
その足元まで間近に拝観できることも長谷寺の大きな特徴です。

ここでひとつ、知っておくと面白い話を。
長谷寺式と呼ばれるこの観音様のお姿には、右手に錫杖(しゃくじょう)、
左手に水瓶(すいびょう)を持つという、他では見られない独特のスタイルがあります。
これは長谷寺が発祥とされており、全国の「長谷観音」と呼ばれる観音様は、
このお姿を模して造られているものが多いのです。

鎌倉の長谷寺(神奈川)もそのひとつで、「長谷寺式観音」という様式が全国に広まったのは、
それだけこの寺への信仰が深く、各地に伝播したことの証ともいえます。

仁王門から本堂へと続く399段の登廊(のぼりろう)も長谷寺の名物です。
屋根のついた回廊に吊られた灯籠が幻想的な雰囲気を醸し出しているこの登廊、
実は三つの廊に分かれていて、それぞれ建てられた時代が異なります。

一番古い部分は室町時代のもので、後に増築・修復を重ねてきた歴史が廊の構造に
そのまま刻まれています。

「この段を上りながら、平安時代の女性たちも同じ景色を見ていたのかもしれませんね」と
お客様にひと言添えるだけで、399段の道のりがまるで違う体験になります。
ぜひ、途中の曲がり角にも注目して頂いて、立ち止まってみて下さい。と伝えましょう。

↓長谷寺の回廊の曲がり角


長谷寺は枕草子や源氏物語にも登場し、平安時代の女性たちが「長谷詣で」としてこの寺へ
参詣した様子が記されています。

当時、大和路の旅は決して楽な道のりではなかったはずですが、
それでも多くの人々が観音様への祈りを胸に歩いてきたのだと思うと、
その積み重なった時間の重さを、境内のどこかで感じていただけるのではないでしょうか。

残暑の中、秋の足音を少しずつ感じながら、大和路への旅をぜひご計画ください。
夏の疲れが出やすい時期ですが、どうかご自愛の上、
実りの多い秋のシーズンをお迎えください。
(2026.08.27)

 
 
   
 
 
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